等方性ピッチ系炭素繊維とは
等方性ピッチ系炭素繊維とは
異方性ピッチ系炭素繊維と等方性ピッチ系炭素繊維は、どちらも元の原料としてコールタールピッチや石油ピッチが使われますが、それぞれ原料ピッチの加工方法が異なります。
等方性ピッチ系炭素繊維は、原料ピッチを特殊な方法で加工し、黒鉛の結晶構造が発達しないようにします。これにより得られるピッチは無秩序で、光学的に等方性(どの方向から見ても同じ性質を持つ)を示します。この等方性ピッチを紡糸し、熱処理・炭化させることで、等方性ピッチ系炭素繊維が作られます。
等方性ピッチ系炭素繊維は、原料ピッチの特殊な加工方法により黒鉛結晶構造が発達しないため、機械的な強さや熱伝導率が炭素繊維の中では比較的低くなります。
一方、異方性ピッチ系炭素繊維は、原料の加工過程で黒鉛の結晶構造が発達しやすくなります。このため、高い強度や弾性率、導電性などの特徴を持っています。
炭素繊維の種類と特徴
PAN系炭素繊維 | 異方性ピッチ系炭素繊維 | ドナカーボ (等方性ピッチ系炭素繊維) |
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原料 | PAN(ポリアクリロニトリル) | 石油系ピッチ・石炭系ピッチ | 石炭系ピッチ |
結晶構造 |
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特徴 |
炭素繊維共通軽量・耐薬品性・耐腐食性・熱伝導性・低熱膨張性 など |
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高強度 高弾性、高導電性 |
高剛性 高熱伝導性、高導電性 |
高摺動性・耐摩耗性 低導電性・耐熱性 |
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主な用途 | 航空機、自動車、ロケット、スポーツ用品 風力発電用ブレードなど |
工業用ロボットアーム、工業用 カーボンロール、プロペラシャフト など |
クラッチ用摩擦材、耐熱材、 樹脂・ゴムコンパウンド など |
ドナカーボ®とは
ドナカーボは、摺動性を向上させる効果があります。例えば、樹脂成型体に混合した場合、耐摩耗性を向上させながら相手材を傷つけにくい効果がでます。また、摩擦係数を低くすることができます。その要因は2つあります。一つはドナカーボは摺動により
適度に繊維の破壊が起こり相手材の表面に繊維を含んだ樹脂の皮膜が形成されやすいこと、もう一つは、結晶構造が無配向かつ低結晶性であるために適度な硬さであり皮膜が保持されやすいことです。この皮膜により摩擦が生じる界面が安定し、摺動性の向上に期待ができます。
次に、ドナカーボは肌に優しく、触っても刺激を感じにくいため施工時のハンドリングが容易です。これは、繊維がランダムな方向に曲がりやすいため、特定の方向からの刺激が少ないことが理由です。
ドナカーボは、非常に高い強度や弾性率はありませんが、高い潤滑性、低導電性、低熱伝導性などの特徴があります。そのため、自動車や半導体の分野の樹脂やゴムへの添加剤、高温環境で使われるシリコンやサファイア結晶の成長炉、カーボンやセラミック、超硬金属などの焼結炉などで、断熱材として広く使われています。
当社で製造販売している等方性ピッチ系炭素繊維 ドナカーボ®及び様々な形状に加工したドナカーボ製品は特に下記のような特徴があります。
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- 摺動性
- ドナカーボは自己潤滑性があり耐摩耗性に優れていることに加えて、力学物性が適度に小さいため相手材を傷つけにくく、熱硬化性樹脂・熱可塑性樹脂、ゴムなどに配合すると摺動性の向上に寄与します。
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- 低熱伝導性
- 原料ピッチの特殊な加工方法により、黒鉛結晶構造が異方性ピッチ系炭素繊維やPAN系炭素繊維と比べると発達していないため、炭素繊維としては熱を伝えにくくなっています。
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- 曲状
世界で唯一の曲状炭素繊維であるため、かさ高く立体的なフェルト状、シート状、ペーパー状の製品加工が可能です。これらの製品は炭素繊維としての特性を備えながら圧縮反発性やガス透過性に優れています。
また、繊維が曲状であるため樹脂やゴムにコンパウンドした際にランダム配向になりやすくマトリックスを均一に保護します。
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- 耐薬品性・
耐腐食性 - 炭素同士の結合が非常に安定しているため化学反応が起きにくく、酸・アルカリに非常に強い耐性を示します。
- 耐薬品性・
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- 熱寸法安定性
- 熱膨張係数が非常に小さく、また繊維が曲状であるためコンパウンドした際にランダム配向になりやすく、樹脂成型品などに熱寸法安定性を付与します。