吸着等温線
吸着等温線とは
吸着等温線(adsorption isotherm)は、一定温度における吸着量と吸着質の濃度(気相:分圧、液相:濃度)の平衡関係を示す曲線です。温度が一定の条件で吸着質の濃度を変化させたとき、平衡状態での吸着量がどのように変化するかを表します。
吸着等温線は活性炭の吸着性能を定量的に評価し、処理システムの設計に不可欠な情報を提供します。
IUPAC による吸着等温線の分類
IUPAC(2015)は気相吸着等温線を8種類(Type I(a)、I(b)、II、III、IV(a)、IV(b)、V、VI)に分類している。Type Iはミクロ孔材料に特徴的な等温線であり、Type IVはメソ孔材料に特徴的な等温線である。2015年の改訂では、Type IおよびType IVが細孔構造の違いを反映してそれぞれ2種類に細分類された。
| タイプ | 特徴 | 適した材料・細孔構造 | 代表例 |
|---|---|---|---|
| Type I(a) | 極めて低い相対圧で急激に吸着し飽和する | 狭いミクロ孔(おおむね1 nm以下)が発達した材料 | ゼオライト、ヤシ殻系活性炭 |
| Type I(b) | I(a)より緩やかに吸着し飽和する | 広いミクロ孔および細いメソ孔を有する材料 | 多くの活性炭、活性炭繊維 |
| Type II | 単分子層形成後に多層吸着が進行する(S字状) | 非多孔質またはマクロ孔性材料 | カーボンブラック、一部の酸化物粉体 |
| Type III | 吸着剤-吸着質相互作用が弱く、低圧で吸着が起こりにくい | 吸着親和性の低い系 | 水蒸気-疎水性炭素表面系 |
| Type IV(a) | メソ孔での毛管凝縮によりヒステリシスを示す | メソ孔性材料 | シリカゲル、MCM-41、メソ孔活性炭 |
| Type IV(b) | 毛管凝縮を示すがヒステリシスを伴わない | 均一な細いメソ孔を有する材料 | 均一メソ孔シリカ |
| Type V | Type IIIに類似するが毛管凝縮に伴うヒステリシスを示す | 吸着親和性の低いメソ孔材料 | 水蒸気-メソ孔炭素材料系 |
| Type VI | 多層吸着が段階的に進行する(階段状) | 均一な非多孔質表面 | グラファイトなどの均一表面 |

活性炭は通常 Type I(a) または Type I(b) の等温線を示す。Type I(a) はヤシ殻系活性炭などミクロ孔が発達した材料に多く見られ、Type I(b) は広いミクロ孔や細いメソ孔を有する活性炭で観察される。また、木質系薬品賦活炭のようにメソ孔が発達した活性炭では Type IV(a) に類似した挙動を示す場合がある。
Langmuir 式
背景と仮定
Irving Langmuir(1916年)が提案した単分子層吸着モデルです。以下の仮定に基づきます。
- 吸着は単分子層のみ(単層吸着)
- すべての吸着サイトは等価(均一表面)
- 吸着した分子間に相互作用はない
Langmuir 式
q = qmax × KL × C / (1 + KL × C)
- q:吸着量(mg/g または mol/g)
- qmax :最大吸着量(単分子層満杯時)
- KL :Langmuir 定数(吸着平衡定数)
- C:平衡濃度(mg/L または mol/L)
線形変換
実験データのフィッティングには以下の線形形式が使われます:
C/q = 1/(qmax × KL ) + C/qmax
C/q を縦軸、C を横軸にプロットすると直線が得られ、傾き(1/qmax )と切片(1/(qmax ×KL ))から qmax と KL を求められます。
適用範囲と限界
- 低濃度域(KL ×C « 1):q ≈ qmax ×KL ×C(一次吸着、Henry則に収束)
- 高濃度域(KL ×C » 1):q ≈ qmax (飽和、最大吸着量に漸近)
- 限界:実際の活性炭は不均一表面のため、Langmuir 式が適合しない場合も多い
Freundlich 式
背景
Herbert Freundlich(1906年)が実験的に見出した経験式で、不均一な表面を有する吸着剤の吸着平衡を経験的に表現する式です。
Freundlich 式
q = KF × C1/n
- q:吸着量(mg/g)
- KF :Freundlich 容量定数((mg/g)(L/mg)^(1/n)):吸着性能の大きさを示す
- C:平衡濃度(mg/L)
- 1/n:吸着強度の指標(0 < 1/n < 1 の場合が多い)
線形変換(対数形式)
log q = log KF + (1/n) × log C
log q を縦軸、log C を横軸にプロットすると直線が得られます(Freundlich プロット)。
定数の意味
| 定数 | 意味 | 値の解釈 |
|---|---|---|
| KF | 吸着容量の尺度 | 大きいほど吸着量が多い |
| 1/n | 吸着強度・吸着のしやすさの指標 | 1/n < 1:有利吸着、1/n > 1:不利吸着 |
| n | Freundlich指数 | n > 1 が一般的(適切な吸着系) |
1/n < 1(n > 1)の場合、濃度の増加に比例して吸着量の増加率が低下する「有利吸着」を示します。活性炭による有機物吸着ではこのパターンが一般的です。
Langmuir 式 vs Freundlich 式の比較
| 項目 | Langmuir 式 | Freundlich 式 |
|---|---|---|
| 背景 | 理論式(単分子層仮定) | 経験式 |
| 表面均一性 | 均一表面を仮定 | 不均一表面に対応 |
| 吸着モデル | 単層吸着 | 不均一表面吸着を経験的に表現 |
| 高濃度での挙動 | 飽和吸着量 qmax に収束 | 飽和吸着量を仮定しない。実系との乖離が生じる場合がある |
| パラメータ数 | 2(qmax , KL ) | 2(KF , n) |
| 活性炭への適合性 | 中〜高(系による) | 高い場合が多い |
実際には両モデルを適用し、相関係数(R²)やパラメータの妥当性を考慮して採用するモデルを決定します。
実務での使い方
設計吸着容量の推定
処理する水の目標濃度(処理水濃度 Ce )が決まっている場合、吸着等温線から設計吸着容量 q を求めます。
例:Freundlich 式で KF = 50、1/n = 0.4 の活性炭を使用し、平衡濃度 Ce = 0.1 mg/L を達成したい場合:
q = 50 × (0.1)0.4 ≈ 50 × 0.251 = 12.6 mg/g
この条件における平衡吸着量は12.6 mg/gと推定されます。
必要活性炭量の計算
平衡吸着量を用いた概算では、処理水量と除去すべき物質量から必要な活性炭量を計算できます:
必要活性炭量(g)= [除去すべき物質量(mg)] / [設計吸着容量 q(mg/g)]
等温線の温度依存性
物理吸着は一般に発熱現象であるため、高温では吸着量が低下します。夏季と冬季での吸着性能の差を考慮した設計が実務では重要です。
実際の処理系での注意点
- 水処理では有機物が混在するため、競合吸着が生じ、単一物質の等温線より吸着量が低下します。
- 活性炭の劣化(再生の繰り返しによる細孔構造の変化や灰分の蓄積など)により、吸着容量が低下する場合があります。
- 等温線はあくまで平衡状態の吸着量であり、実プロセスでは接触時間(EBCT)も設計に考慮する必要があります。
活性炭ビジネス100年の歴史と未来へ
大阪ガスケミカルの活性炭事業 100年の歩みとこれからのストーリー。
高機能活性炭のご相談なら、大阪ガスケミカル株式会社へ
「白鷺」ブランドを展開する大阪ガスケミカル株式会社は、2014年にスウェーデンの Jacobi Carbons Group をグループ化し、世界トップクラスのグローバル活性炭メーカー として、世界10か国の製造拠点から100か国以上のお客様へ製品・技術を供給しています。 用途に応じた豊富な製品ラインアップからお選びいただけます。
活性炭のご相談・お見積は、大阪ガスケミカル株式会社へ
大阪ガスケミカル株式会社は、上水処理、空気浄化、食品・医薬品の精製、工業用途まで 幅広い分野で活性炭を提供する専門メーカーです。製品選定から納入後の技術サポート まで、活性炭事業部が一貫してお応えします。
大阪ガスケミカル株式会社 活性炭事業部